こんにちは、修士3年の伊藤です。
前回の記事では、「Flab展 388のプロジェクトを通して見る」の トークイベントに関しましてご報告させていただきました。
本記事では、本展覧会開催に至るまでのメイキングストーリーをご紹介いたします。
①25年間の活動の整理
本展覧会の準備は、まず25年間の活動の情報収集・整理から始まりました。これまでに出版された古谷さんの書籍や研究室に保存されているデータ、またOBOGの皆さんにご協力いただきながら、情報収集が行われました。情報収集も終盤になってくると、「〇〇の活動があることはわかっているが、データがない」という状況が起こり、古谷さんに歴代のパソコンを持参いただき、ひとつずつ遡ってデータを探すこともありました。最終的には、388のプロジェクトを展示することになりました。
②活動のつながりの整理
展示計画として、活動をただ網羅的に紹介するだけでなく、負けたコンペが数年経って別の形で実現していくような、活動のつながりも展示していくことが決まったため、活動のつながりも整理する必要がありました。収集した活動から年表を作成し、古谷さんにつなげていただきました。
③展示計画案の構想
布がギャラリー内に垂れ下がっており、そこをかき分けて歩くようなイメージが、当初からありました。布をギャラリー内にどのようなロジックで配置するのか、布面には何を印刷するのか、様々な案を考え、模型を作りながらブラッシュアップしていきました。最終的には、以下のことが展示物として決まりました。
①活動のつながり(LINK)をワイヤーでつなぎ、そのつながりの要素を布面に印刷して展示すること(展示計画案④)
②388のプロジェクトをポストカードでそれぞれ紹介すること
が決まり、布をかき分けながら情報の錯綜した展示空間を歩いてもらうことを想定しました。
④ポストカードデザインと配置
ポストカードを壁面に並べるにあたり、様々な並べ方が検討されました。最終的には、388のプロジェクトをA5サイズのポストカードでそれぞれ紹介し、それらを壁面に年ごとに並べることで、徐々に増加していく活動数やジャンルが視覚的に伝わるような配置案となりました。
また、ポストカードそのもののデザインに関しては、まず、イメージや写真を正方形にして右側に寄せることが決まり、その後、情報の載せ方や10ジャンルの色の認識のさせ方が決まりました。
⑤布面デザインとワイヤー配置
布面にそのつながりの要素を印刷するにあたり、19のLINKの名前を古谷さんに考えていただきました。布面には、そのLINIK名とともに、LINKしている活動の図面やパースや写真など、様々な表現形式のものをごちゃまぜに配置しました。また、ポストカードの配置が決まったことで、ワイヤーと布の位置も決定しました。
⑥フライヤーデザイン
今回、これまでのフライヤーの概念を超えるような、ただ展覧会の情報が載っているだけでないフライヤーを考えたいと思いました。フライヤーのデザインにはかなりの時間を割き、古谷さんとのMTGには、本記事では紹介しきれないほど、たくさんの案をお見せしました。最終的には、一見ごちゃごちゃに見えるデザインのフライヤーが、展覧会を見に来た人がある操作をすることで、デザインが整理されるようなものを考えました。具体的には、ジグザグに折ることで、シャッフルされていたデザインがひとつのデザイン面になるようなデザインを考えました。当初は、文字のみでデザインしようかとも思いましたが、複数の色やシルエットを用いることでよりシャッフルされているように見えるデザイン案にブラッシュアップしていきました。ちなみに、最終案のデザインに用いられている10色は10ジャンルの10色を用いています。今回の展示やトークイベントで、25年間の活動を「ジャンル」、「年代」、「つながり」、「古谷さん自身」、「歴代助手のみなさん」、「OBOGの方々」、「建築家で研究室を持つ3人の教員の方々」と様々なレイヤーを通して古谷誠章研究室を見ることによって、整理しようとした本展覧会にふさわしいフライヤーになったのではないかと思います。
⑦ブックレットデザイン
ギャラリーを貸してくださったGallery TENでは、毎回の展示でA5サイズのブックレットをお配りしているということで、展覧会会場で配布するブックレットもデザインさせていただきました。ブックレットのコンテンツとして、古谷研25年の年表を載せることが決まり、古谷研発足時からこれまでの25年間を5年ごとの5時代に設定しました。ブックレット内の5時代の説明は、MTGにて古谷さんに5時代を語っていただいた際の内容を元に作成しています。
⑧設営
オープン直前は、388枚のポストカードの作成とポストカードを設置するためのパネルの作成に追われました。Flab展メンバー以外のたくさんの古谷研の学生に手伝ってもらい、準備が進められました。
オープン前日は、研究室にて作業する学生とギャラリーにて作業する学生に分かれました。ポストカードの作成を研究室にて行い、出来次第ギャラリーに運び、パネルの調整とともに、ポストカードの貼り付けが行われました。夜通し作業が行われ、設営終了時には、flab展メンバーも手伝ってくれた学生も、完全燃焼でした。
今回のような古谷誠章研究室を総括するような展覧会に携わらせていただき、大変光栄です。最初から最後まで、何から何まで思う存分やらせていただきまして、感謝しております。古谷誠章研究室のたくさんの偉大なOBOGの皆様がこれまでどんなことを考えて建築を作ってきたかを濃く体感することもできましたし、本展覧会の準備を進めていくうえで、普段のプロジェクト以上に古谷さんの思考を間近で体感することができました。
Flab展プロジェクト リーダー
修士3年 伊藤 瑛久