こんにちは
修士二年?橋京平です。
12月7日、半透明空間研究ゼミから提出された2014年度の卒業論文に対するレビュー会を行いました。
本年度の半透明空間研究ゼミからは高橋喜子さんによる卒業論文一本が提出されました。
ここでは今年の研究の内容を振り返りながら、レビュー会で行われた議論を紹介していきたいと思います。
『香港大澳における水上棚屋の公私領域研究 ー空間構成と生活のあふれ出しの比較を通じてー』
2001年と2004年に古谷研半透明ゼミで調査を行っている香港の大澳集落を調査地とした10年越しの継続研究です。
20年近い歴史をもつ半透明ゼミですが、本年度の論文で初めて継続研究を行いました。
調査地香港の位置です。こう見ると、日本からは近いようで遠い、遠いようで近い距離感ですね。
赤丸で示されているのが大澳集落です。政治的問題で話題になっている香港中環(CENTRAL)とは電車とバスで二時間くらいの距離にあります。
漁業の町として栄えてきた大澳では、船を住居化、陸地化してきたことで、
特殊な集落空間が形成されてきました。
このような集落で、以前はデッキ空間の半透明性(プライベートとパブリックが複雑に同居することで心地の良い特殊な空間)に着目した研究がされてきました。
そこで本年度の我々の研究では、
観光地化や現代化、人口減少と都市への流出などの社会的な背景が大きく変わったこの10年間で、以前の調査時からどのような変化があったか、そのなかでも変わらない部分はどのようなシステムによるのかということを主眼において研究を行いました。
調査方法としては、
空間の客観的な記述として魚眼レンズを用いた写真撮影
住民の方へのヒアリング、アンケート
配置図、平面図、もののあふれだしの実測
などを行いました。
結果として、様々な社会背景の変容があるにも関わらず、大澳独特の集落空間は維持されていることが分かりました。
集落空間を維持していくシステムは、海側のデッキ空間を隣近所の数軒という小さな単位の共同体で共有し、さらにそれらが海を介して緩やかにつながることで変化に柔軟に対応しているということを結論としました。
この論文に対し,
・同集落内に様々な半透明空間の種類があり、それらの異なる構造が分散していることで様々な変化に対応できるのではないか、またそれが半透明空間のもつ現代的な力なのではないか。
・潮の流れや地形などの基本情報、異なる半透明空間はどのような過程をもって生成されてきたか、観光地化などを具体的に表現するデータなどが示せればもっと説得力があった。
などの指摘がありました。
また、ゼミとして初めて行った継続研究に関して白熱した議論が展開されました。
・10年というスパンは歴史学にもない視点で、住んでいる人たちの小さな空間的操作をみることが出来る。
・10年位のタイムスパンで空間をみると、それは設計に応用出来る可能性が非常に高い。
・変容と維持、という大きなテーマが半透明ゼミの根底にあるので、それらを詳細に見ていくことには大きな価値がある。
・年によってテーマも調査方法も異なるので、調査地の基礎情報が共有できないことが難しい。今回の研究でもその点が大きなネックになっていた。
・今後研究方法の体系化が期待される。
その後、卒論生と研究メンバーを労う打ち上げを新宿の本格点心レストランで行い、
今後のゼミのあり方について朝まで議論を交わしました。
以上、長くなりましたが半透明空間ゼミの本年度の活動を振り返りました。
来年度以降の研究に期待が高まるばかりです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。