【美濃加茂PJ】役場の改修が完了し、カフェがオープンしました!

By flab, 2018年9月27日

こんにちは、修士1年の荒野です。
今回は美濃加茂市旧伊深村で2017年度役場を改修し、今年2018年5月にオープンしたカフェについてご紹介いたします。

改修する前の姿や工事中の様子を少し振り返ってみたいと思います。
昭和11年に伊深村の村役場として建設された役場庁舎は、町村合併後、住民がサークル活動などで利用する集会場として活用されていました。その後、2014年に施設の老朽化により一般の利用が禁止となりましたが、2016年11月に国の登録有形文化財に認定されました。

続いて、工事中の風景です。
古材はなるべく再利用するようにしながら、改修を行いました。学生である私たちも改修図面の作図を行い、現場で細かなチェックを行いながら進めていきました。

詳細について知りたい方は、前回の記事を御覧ください。

これから、私たちが進めてきた改修計画についてご紹介いたします。

【コンセプト】
今回改修を行った旧伊深村役場庁舎は古くから地域の中心的存在でした。その地域の記憶を継承しつつ、観光やまちづくりの中心として地域内外の人々が訪れる施設とする事を考えました。また、文化財としての保存を行いつつも、単なる復元ではなく地域の公共施設としてこれまでの自治会館としての機能を延長・発展させた新たな活用提案も行いました。

【設計】
昨年2017年度に行なった3回のワークショップや写真収集などの復元調査により、かつての部屋割や機能を踏襲して「地域の記憶の継承」を行いつつ、耐震補強や新たな機能の付加といった「現代的更新」を行いました。単なる保存とも転用とも異なるこの計画が、古くから地域を見守る役場の姿を残しながらも、伊深の新たな公共施設として、住民同士の交流や観光、まちづくりの中心となり、地域内外の起点として機能することを目指しました。

【地域の記憶の継承】
文化財として価値ある歴史的な要素を抽出し、形を残すことで地域の記憶を継承しました。
下記にて「地域の記憶の継承」を行った箇所を紹介します。

○受付カウンター
玄関横の土間はかつて役場の受付窓口として使われていました。昔の受付カウンターの様相を残し、土間側を伊深町の情報を発信するディスプレイ棚、執務室側をカフェの食器棚として新たな機能を付加させました。

○村長室
村長室はかつての応接空間の面影を残す飲食スペースとしました。
存在感のある村長机で、コーヒーを飲みかつての伊深村や役場の姿に思いを馳せることができます。

○会議室
会議室は、壁面をかつての土壁に復元し、ワークショップで得たこたつで団らんした思い出を活かし、掘りごたつを計画しました。
また、地域の活動スペースとして利用可能で、隣室との仕切りを外せばイベントでの活用も考えられます。

○印刷室
印刷室はかつて親子文庫が行われていたこともあり、近くの小学生が読書・宿題をできるような落ち着いたスペースとしました。

○玄関・外観
施設のエントランス部分には、古写真からかつて門柱が配させていたことがわかりました。門柱を復元するにあたり、街灯が少ない伊深の暗い夜を照らす門灯を新たに加えました。屋根や外壁は主に復元を行い、伊深の風景となっている特徴的な外観を継承しました。古い瓦はできる限り再利用し、面影を残すため正面側に優先的に配置しました。

【現代的更新】
施設一帯を地域の交流拠点となるカフェとして、新たな機能の付加や設備の改善などを行い、現代的に更新しました。
下記にて「現代的更新」を行った箇所を紹介します。

○執務室
執務室にはカフェの飲食スペースと調理スペースを計画しました。アイランドキッチン型のカフェカウンターによって、運営者がお客さんとコミュニケーションをとりやすくしています。菓子製造が可能な製造用厨房は、新たに追加されたことが分かるようボックス状とし、地域素材である美濃和紙を貼り柿渋仕上げとしました。

○村長室
村長室と執務室の間には、運営者がキッチンから飲食スペースの村長室まで見通せるよう両側を棚にした「透ける壁」を計画しました。古民具や小物を自由に配置できるランダムな形状の可動棚には、美濃和紙のシェードが配され、施設全体にも同じモジュールのシェードが散りばめられています。

○トイレ・スロープ
トイレはカフェの内部空間確保のため、外部の議会棟があった場所に計画しました。復元した役場棟の外壁と合わせた同色のタイルと焼杉を外壁に用いて、周辺との調和を図りました。外構には車椅子対応のため新たにスロープを設置し、周囲は既存外構にならい石積みとして馴染ませました。

【完成・オープン】
改修工事は3月に竣工し、4月に内覧会が開かれ、5月に『茶霞o’carré(さかオキャレ)』というカフェとしてオープンしました。
こうして、昔ながらの役場の姿を残しつつ、住民同士や地域外の人との交流ができる伊深の新たな施設として生まれ変わりました。

また、オープン前にはオープニングイベントが3日間にわたり行われ、多くの方が訪れました。
次回は、その様子をご紹介したいと思います。

修士1年 荒野颯飛

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