建築雑誌10月号に高崎市立桜山小学校が掲載されました

By flab, 2009年10月23日

20091023-img09958.jpeg

ご報告が少し遅くなりましたが、日本建築学会発行の月刊誌「建築雑誌」の10月号にナスカと古谷研究室が関わった高崎市立桜山小学校のワークショップの記事が掲載されました。
インタビュアーは東京理科大学准教授の伊藤香織氏、インタビューを受けてくださったのはWSでお世話になった青山学院大学教授の苅宿俊文氏です。
桜山小学校は、特集『建築のデリバリー』の中の一つの事例として紹介されています。
設計者から施主へ、つまりは作る側から使う側へと建築が引き渡されるにあたり、
いかにしてそのプロセスの中で“デリバリー”をデザインしていくかということを扱った特集でした。


とかく公共建築というものは使い手側…小学校であるならば周辺住民なども含め、地域がどれだけ建築を受け入れてもらえるかが重要になります。先日行われた「建築夜学校2009 データ、プロセス、ローカリティ、設計プロセスから地域のアイデンティティを考える」の第2夜でも話題になっていましたが、住宅など対象が少人数の場合には綿密に対話を重ねることで施主の本当に求めるものを発見することもあるかもしれませんが、対象者が百単位・千単位になってくるとどうしても全員が納得できるものを作り出すことは不可能となってしまいます。それがこと紋切り型のプランではなく、建築家が作り出す作品であるのならば尚更容易に受け入れられない可能性が出てきてしまうでしょう。

20091023-img09959.jpeg
20091023-俯瞰3.jpg
20091023-R0014286.jpg

桜山小学校でもワークショップがそもそも始まったのは、桜山小学校が高崎市内初のオープンプランタイプの小学校ということで、児童や教職員の方々が戸惑ってしまうことのないようにするための布石ということでした。オープンスペースをいかにして日常的に利用していくのか、どのような授業形態が可能なのかを理論ではなく体験として知ってもらおうという試みです。
鈴木明氏もおっしゃっていますが、子供を対象にしたWSでも、実はそれを見守る先生方や親御さんたちもWSの対象となることが見込まれます。直接的に大人たちがWSに参加するわけではなかったのですが、子供たちには先入観というものがあまりないので、新しい桜山小学校の空間を体感的に使ってくれます。その動きを見ることを通して桜山小学校とその使い方を知ってもらいたいという狙いがありました。
ワークショップという手法には形骸化が危ぶまれる声も聞かれますが、今回の桜山小学校WSにおいては、教育の専門家でもある苅宿先生と、その教え子である大東文化大学の学生の皆さんのご協力をいただいたことでクリアしていると確信しています。実際にWSの内容も、ただ設計者側が一方的にプレゼンをしたり、模型を作ることを強要したりするのではなく、子供たちが楽しむことを優先にしつつ、それでいても尚教育的な価値も持ったWSを目指していました。さらに第2回以降についていえば、WSの内容が学校の授業内容とも関連していて、より実践に近い形でのシミュレーションを行っています。
初めはWSについて疑問視されていた先生方から、WSが終わった後に「非常に参考になりました」と言っていただけましたし、実際にこの夏行われた行動観測の調査では桜山小学校でOSが利用されているのが確認されました。もちろん、一方で批評も頂いていますし、WSの効果を具体的な数値で出したり、確実な立証を成すことはできないのですが、総合的に見れば、「桜山小学校建設に伴うWS」は設計者としてのナスカと古谷研、施主としての高崎市(教育委員会)、そして利用者の小学校がうまく協働して行っていくことができた貴重な事例と言えるのではないでしょうか。
その上でやはり、今回の事例で重要になっているファクターが異分野の方々とのパートナーシップでしょう。
設計者と施主(及び利用者)という1対1の構図ではなく、そこにファシリテーターとして異なった意見を持つ人が参加することがいい構図の変化を及ぼしているのだと思います。片方だけでは提案できない、あるいは思いつかないことを、違う視点を持つ第3者がいることで建築的にも教育的にも多くのアイディアを生みましたし、私たちの提言に厚みの様なものを与えることができました。さらに、回を重ねるごとに早稲田の学生はワークショップでどのようなことを行うことが一番利用者にとって嬉しいのかが分かり、大東の学生も空間をどのようにして利用していくのかを理解していったように見えました。WSで多くのことを学んだのはほかでもない私たちだったのかもしれません。
建築を使う側へデリバリーするにあたってWSをその手法としてとらえるのは従来の手法とは比べ物にならないほど時間もお金もかかります。しかし、その苦労に見合うだけの価値はあると、個人的には体験を通じて考えています。これを煩わしいことと捉えるか、貴重な経験としてとらえるかでWSを設計者側が行うことの意味は大きく変わってくるのではないでしょうか。
苅宿先生と古谷先生の親交が10年近くあること、大学生が40名近く参加していることなどを考えれば直接一般化することはできない事例であるとは思いますが、今後に繋げるべき点も多くあるはずです。
現在も古谷研はいくつかのWSを企画しています。これが唯一の手法でないことは間違いないですが、まだまだ掘り下げるべき手法であることも間違いありません。どこまで自分が学生のうちに関わることができるのか分かりませんが、より自分のなかで醸成していきたいと思います。
長々と失礼しました。
M2 矢尻。
※「桜山小学校建設に伴うワークショップ」の活動についてはflab Archivesをご覧ください。
※関連リンク
NPO学習環境デザイン工房」…苅宿氏が代表を務めるNPO団体です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です