修士二年?橋京平、長谷川駿です。
11月22日、高密度高複合都市研究と半透明空間研究の合同卒論レビュー会および、「ゼミはどこへ向かうのか」という議題で合同会議を行いました。
古谷研においてプロジェクトと研究が多様化し、同じ研究室内でもお互いの活動内容を共有出来ていない状況が非常にもったいないと感じていました。
近しい関係にある両ゼミで本年度の卒業論文の合同レビュー会を行い両者の活動内容を共有するとともに、
双方のゼミの理論的支柱は何か、抱える問題点は何か、今後ゼミはどのような方向へ向かうべきなのかを議論しました。
また、今回は作家論ゼミで精力的に活動を行っている修士1年の小田切駿君が参加してくれ、幅広い視点から議論を展開する機会を与えてくれました。
素晴らしい論文発表と、知的興奮の詰まった会議内容を以下からご確認ください。
■第一部 卒業論文発表およびクリティーク
高密度高複合都市研究
内田 久美子
『高密度居住地カンポンの小さな改善による都市への順応手法ー中央ジャカルタ7エリアの比較調査から』
インドネシア、ジャカルタの都市内集落と呼ばれるカンポンで見られる柔軟な都市への順応手法を研究した論文に対し、
明快な構成とわかりやすい言葉で説明されていること、
俯瞰的な都市論よりの研究が多いアジアゼミにおいて集落内での活動を記録し、都市内集落の全体像をつかもうとしている姿勢が高く評価されました。
一方で、研究の糸口として紹介されていたサシェマーケティングの扱い方が曖昧であること、一昨年の猪又直己君の研究で取り上げられた情報化が進行した社会としての視点をもつことなどが今後の研究の可能性としてあげられました。
瀬島 蒼
『住宅のコンバージョンによる私営公共空間の特性と住宅地の用途複合化』
私営公共空間という言葉を作り、その新しい公共性のあり方について研究した論文に対し、
着眼点は評価されましたが、研究的な視点やテーマの欠落が課題点としてあげられました。
具体的には新興住宅地に関する問題をふまえた上での研究、あるいはアジアゼミでこれまで取り組まれてきた駅圏ボロノイマップとの複合などが可能性としてあげられました。
仲西 將
『都市近郊市民農園の共有空間に関する研究 ー多摩田園都市およびその周辺をモデルとして』
近年注目の集まる市民農園に着目し、東急電鉄の開発地域である多摩田園都市線を調査対象として新しい共有空間のあり方を研究した論文に対し、
市民農園の分類に関する議論で盛り上がりました。
運営主体と利用者の類型化から空間に言及していくことが今後の発展形としてあげられました。
半透明空間研究
高橋 喜子
『香港大澳における水上棚屋の公私領域研究 ー空間構成と生活のあふれ出しの比較を通じてー』
10年前の古谷研での研究と比較することで近代化が進んだ調査対象地でどのように集落空間が維持されているかを研究した論文に対し、
テーマが観光地化なのか、既往研究との比較なのかが曖昧で焦点がぼやけてしまっていたことが指摘されました。
今後の可能性としては、近代化によって変化しなかった空間にフォーカスを当ててを執拗に調査することがあげられました。
■第二部 ゼミはどこへ向かうのか
20年近い歴史のある両ゼミで近年、テーマの発見や調査手法、結論のマンネリ化が見受けられます。
そこでまずは問題点を明らかにするために、ゼミに長年在籍しておられるOBの先輩方に両ゼミの歴史を振り返っていただきました。
両ゼミの起源
作家論研究などとは異なり、両ゼミは古谷先生以外のメンバーで独立的に研究の本質・意義を考えてきました。
また、10年程前までは両ゼミで協同して研究、調査を行っていたそうです。
半透明ゼミの変遷
以前は純粋な集落調査を行い、暮らしや空間の記録を研究として行っていましたが、
ここ数年は近代化による影響を研究背景に取り込んだ研究、2011年の震災後からは見えない集落の維持システムなどに着目するようになってきました。
半透明ゼミの重要な姿勢として、半透明ゼミではもともとどのように空間を記述・記録できるかという視点がありました。心地いい空間の要因を分析し、設計に活かすための再現性を追求しているともいえます。
論点 ゼミはどこへ向かうのか
半透明ゼミにおいては3年前の符・福井の論文から取り入れてきた環境的側面から空間を評価すること、震災後から芽生えた既存の集落研究とは異なる視点、あるいは空間研究としてののベースに戻り実空間の記述方法を探るなど三つの可能性があげられました。
アジアゼミでは今年度の三本の卒業論文で共通したテーマ、一般的には指摘されていない空間・場所に公共性を見出す、という研究方針に大いに可能性を見出しました。
また、両ゼミが抱える問題として調査方法の洗練、現代化の必要性が指摘されました。
これに対し、画像解析や環境調査を専門的に行っている研究室との恊働、あるいはゼミとして調査方法を研究する姿勢の必要性があげられました。
研究室やゼミをまたいだ恊働の際には、手法を享受するだけではなく、お互いの知見を共有することを意識しなければいけないということも指摘されました。
論点 恊働の可能性
アジアゼミは都市をどう描くのかという手法や公共性を主軸に、半透明は空間の記述手法を模索することで発展性が見込めるでしょう。
過去に行われた調査地で継続研究として別のゼミが別の切り口で調査をすること、あるいは二つの異なる視点から同じ調査地を研究する恊働のあり方が見えてきました。
まとめ
今回の合同会議を通して両ゼミの歴史的変遷と理論的支柱、抱える問題点が明らかになりました。
今後、各ゼミで自分たちが目指すべきゼミの方向性を議論したうえで、ゼミや研究室に限定しない横断的な恊働のあり方を探っていければと思います。
我々の研究に興味をお持ちの方は是非以下のメールアドレスまでお気軽にご連絡ください。
info@furuya.arch.waseda.ac.jp
よろしくお願い致します。
ここまでおつき合いいただきありがとうございました。