【ゼミ紹介】作家論ゼミ 2016

By flab, 2016年2月1日

建築計画系卒業論文説明会に先立ち、古谷誠章研究室作家論ゼミの活動内容についてご紹介いたします。
本ページの内容は、2016年2月3日実施の説明会にて配布するPDFと同様の内容になります。

古谷誠章研究室作家論ゼミでは、「Le Corbusier」「Carlo Scarpa」「菊竹清訓」を中心として、作品から見る作家性や設計手法についての研究を行っています。また、2015年までの研究では「John Hejduk」「Eero Saarinen」も取り上げて研究を行っていました。どの建築家も、近代建築を語る上で非常に重要な人物です。また、昨年度は作家論として「負の建築(現象的)デザイン研究」として、建築・モニュメントの存在意義を明らかにするための研究を行いました。

もちろん、上記作家以外にも、自分の興味のある建築家について研究することも可能です。

作家論ゼミでは、他にも「建築デザイン方法論研究」として、建築と芸術を横断する方法論の研究も行っています。

 

【作家論研究】

■Le Corbusier(1887-1965)

corbusier

【研究内容】
古谷研究室では、ル・コルビュジエ実測調査研究会の活動の一環として、「ロンシャンの礼拝堂とその建築群」の研究・調査を行っている。2013年度は「巡礼者の家」、2014年度は「司祭者の家」、2015年度に「ロンシャンの礼拝堂」の実測調査を行った。また、研究の一環として2015年7月6日~8月2日にル・コルビュジエ財団の協力を得て、コルビュジエが自ら数多く撮影し、その空間的思考の道具としていた写真に焦点を当てた展覧会、没後50年「写真家としてのル・コルビュジエ」展を早稲田大学會津八一記念博物館にて開催した。2016年度も継続してフランスに赴き、実測調査を行い、これまでの調査・研究の成果として新たに展覧会を開催する予定である。

■Carlo Scarpa (1906-1978)

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【研究内容】
本研究は、近代化の過程の中で多くの近代建築家たちが建築の工業化を進めようとした活動の中、イタリア・ヴェネト地方で手仕事にこだわり創作を続けたイタリアの近代建築家カルロ・スカルパを対象とし、彼が復興した素材・技術を研究し、また彼の死後、それらがどのように伝承されたかを研究することで、彼の建築家としての設計意図とその反映を探ることを目的とする。新築計画よりもむしろ改修計画の名作を多く残したカルロ・スカルパは既存の都市・建築、周辺環境の所与の条件と自身の設計が渾然一体となる設計手法に特長がある。研究は、カルロ・スカルパと協同した職人や弟子、研究者などの見識者へのインタビュ-、ならびにオリジナルドローイングや現地調査、文献翻訳等の一次資料を通して、設計意図や追体験を考察する。また、職人との共同など現場で生まれた多くのディテールや素材、特徴的な空間構成に潜む設計思想を探っていく。

■菊竹清訓(1928-2011)

菊竹

【研究内容】
本研究は、平成23年享年83歳で他界し、生涯を通じてその代表的な著作である『代謝建築論』を礎に置いた建築活動を精力的に行った建築家『菊竹清訓』を研究対象とする。彼は、日本から世界へ向け発信されたムーブメントとして、大きな影響力を持った近代建築運動であるメタボリズムの中心的なメンバーの一人として、今日なお世界から注目され続けている、早稲田大学建築学科を卒業した日本人建築家である。彼が活躍した時代は、戦後の復興から高度経済成長を迎え、東京オリンピックや大阪万博が開催されるなど、日本が第二次世界大戦から復興を遂げるまでの時代の顔を作ってきたとも言える。今後、菊竹清訓の建築作品における老朽化や用途変更等による解体・建替が起こる前に、菊竹清訓が残した建築資料を総合的に整理し、研究することにより、「日本の近代化過程」における建築資料の価値を社会に発信し、理解を得ることとともに、彼の設計意図や活動、思想に関して多角的な論の展開を試みる。

 

■負の建築(現象的)デザイン研究

作家論ゼミ02.02更新 最終 light-2
【研究内容】
本研究は、いわゆる「負の建築」といわれるものの定義を確立するとともにその建築・モニュメントの存在意義を確かなものとする研究である。先の震災を経験し、東日本大震災に際する「メモリアル施設」及び史的文化財を含む改修計画の将来性を検討することが現代において重要であると考えられる。

*2015年度までに研究で取り扱った作家

■John Hejduk(1929-2000)

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【研究内容】
本研究は、建築家でありクーパー・ユニオン(ニューヨーク)での教育者、また詩人、理論家でもあったジョン・ヘイダックを対象とする。ヘイダックは他に類例を見ないアンビルトの建築作品や著作を通し、欧米そして日本の現代建築家に大きな影響を与えた作家である。
彼は70年代にピーター・アイゼンマンやリチャード・マイヤーと共に「ニューヨーク・ファイブ」の一人として数えられ、コルビュジェ、ミースらモダニズムの歴史、デ・スティルやキュビスムなどの芸術思想に根ざした作品を発表し、当時の建築界で論争を巻き起こした。その後は「マスク」という独自の形式に基づいた作品群を通して、現代社会や都市に対する提言を行ない、晩年には建築における精神性・宗教性にコミットした作品群を残した。研究は、カナダ、モントリオールのCCA(Canadian Centre for Architecture)にあるオリジナルドローイング調査や研究者・見識者へのインタビュー、現地調査、文献翻訳、著書の分析等を通し多角的な論の展開を試みる。

■Eero Saarinen(1910-1961)

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【研究内容】
エーロ・サーリネンは1910年に生まれ、1961年に没するまで、短期間のうちに数々の名作を残している。当時、彼は個々の作品で異なる表現が使われ、統一性に欠けた特徴が、建築における共通言語を見つけようとしたモダニズムの流れに反しているとして、度々批判された。このような状況に加え、エーロ・サーリネン死後、50年近く立つ2004年まで彼のアーカイブは一般に公開されることがなかったため、世界的に見ても研究が進んでいない現状がある。
しかし、彼のその多様な作風は、単純性を追求したモダニズム以降に目指された新しい建築像にある一定の示唆を与えていたものとして捉え直すことができ、現代的であるともいえる。近年、Yale大学にアーカイブ資料が寄付されたことにより公開されたオリジナルドローイングや現地調査、研究者や知見者へのインタビュー、文献翻訳を通し、エーロ・サーリネンを中心としたモダニズムやポストモダン、また現代までの歴史を俯瞰的に捉え、彼の思想を探求する。

【建築デザイン方法論研究】

■建築と芸術を横断する方法論研究

作家論ゼミ02.02更新 最終 light-2_2

本研究は、メディアが発達してきた近現代の情報社会において、建築家・写真家・芸術家がそれぞれどのような思惑で建築に接して、建築から影響を受けまた与えたのかを目的とする。研究方法は、ある建築家や写真集、芸術作品などの一つに焦点を当てて、インタビューや現地調査・資料を基にそこに関わった人物の思想背景を考察する。写真に撮られることや芸術から影響を受けることによって生まれてきた特徴的な空間構成に潜む設計思想を探っていく。

■メンバー
助教授:斎藤信吾
M2:高橋まり・中村絵理子・渡辺真歩子
M1:大井雅史・大谷美帆・小坂諭美・御供崇尚

■連絡先(□→@に変換してください)
高橋まり  maritkhs□gmail.com
小坂諭美 k.sato0593□gmail.com

■当日配布資料
作家論ゼミ配布資料ダウンロード

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