私たち古谷誠章研究室では、2013年度の卒業論文の調査をきっかけに、香川県小豆島町堀越地区にて空き家再生・移住促進に関する活動を行ってきました。
そんな中、瀬戸内国際芸術祭2016にアート作品として「シシ垣でつくる堀越暮らしの輪プロジェクト」と題したアートを出展させていただく機会をいただきました。私たちは建築を学ぶ学生であり、堀越の自然・街並・生活・そしてそこに暮らす人々のことが大好きなひとりの堀越ファンでもあります。どうしたらこの堀越の魅力を皆さんに知ってもらえるか、どうしたらこの堀越の人々が豊かに暮らし続けていけるのか、そんなことを考えながらこの作品を構想し、堀越の方々と一緒になってこの作品を作りました。
だからこの作品は私たちだけのものではありません。これを一緒に作った堀越の人々のものでもあるし、これを見に来てくれたあなたのものでもあるし、実はイノシシのものでもあるんです。
え?どういうことかって??その秘密をこれからご紹介します。ぜひ、こちらを一読いただいて、そして何より堀越に実際に訪れてください。そうすればきっと、あなたもすぐに堀越の魅力の大ファンになると思いますよ。
堀越地区は小豆島の南東に位置し、南北を海に挟まれている のどかな地区です。高齢化が進む場所ですが、近年は移住者が増え、子供の遊び声が戻ってきました。地区行事には堀越の外からも人が訪れ、各々手料理を持ち寄り団欒し笑い合います。さらに一度無くなったお祭りが復活したり、売り切れになる窯焼きパン屋さんができたり、魅力と活気が感じられる場所です。
堀越地区には度々イノシシがやってきて、畑や野菜を荒らすことが人々の悩みの種でした。でも、イノシシはとっても臆病な動物だって知ってましたか?
本来、イノシシは人間のいるところには寄ってこない慎重な性格なんです。かつての堀越の段々畑は、高齢者が増えた今では雑草と竹だらけで荒れ放題。だからイノシシが棲みついちゃって、ひと気のないときにこっそり皆の畑を荒らしてたんです。
でもでも、イノシシも悪さをしてばかりではありません。伸び放題になって街を荒らしそうな竹を、たけのこのうちに食べて減らしてくれていたんです。おかげで堀越の家は守られていました。人里に暮らす私たちと、里山に暮らすイノシシが、上手に共存することはできないでしょうか?
そこで堀越を見渡せる場所に、地区にたくさんある竹を使って、みんなで一緒に大きな垣根、シシ垣をつくる事になりました。それは、単にイノシシの侵入を防ぐ柵ではありません。イノシシにとってはここから先は人間の場所でこの手前までがナワバリだよと教える境界線、堀越地区のみんなにとっては集いの場所、そして外からやってくるお客さんのあなたを迎える大きなシシ垣です。どんな人でも、どんな人数でも、どんなことでもできる場所です。
さあ、浜道には歓迎ののぼりも立ちました。ここから眺める堀越はとっても素敵。きっとあなたも気に入りますよ!
シシ垣から堀越の風と眺望を満喫したあとは、いよいよ堀越地区を歩いてみましょう。浜辺の道には芸術祭に訪れた皆さんを歓迎する「のぼり」がたくさん設置されています。こののぼりはポケットのような形をしていて、風が吹くとまあるく膨らみます。私たちはこののぼりに「堀越に住む皆さんに幸せがたくさん訪れるように」「堀越を訪れた皆さんに良い思い出がたくさん貯まるように」と願いを込め、のぼりが大きく膨らむ姿と重ねています。
さて、こののぼりはどこまで続いているのでしょうか?
前述ののぼりをたどっていくと、堀越地区の奥のほう、かつて堀越にあった堀越分教場の「教員住宅」へとたどり着きます。
実は『二十四の瞳』の著者、壺井榮さんのご主人・繁治さんの生家は堀越分教場の隣にあり、榮さんはその家の2階の窓から堀越分校の日々の様子を眺めながら小説を構想しました。つまり堀越分教場こそが『二十四の瞳』の元来のモデルだったのです!現在では分教場跡地は広場となり、花見などの憩いの場所になっています。
分教場に勤める先生が住んだ教員住宅は空き家のまま残されており、今回の瀬戸内国際芸術祭に合わせ昔から現在の堀越の暮らしの写真を展示しています。
堀越の昔から今にいたるまでの写真を堀越地区の皆さんからたくさんお借りして、この度「堀越暮らしの写真展」を行っています。
教員住宅と、お隣の荒神さんの2ヶ所に、それぞれ趣向を変えて写真を飾り付けました。シシ垣とあわせて、ぜひこちらにも遊びにきてください。
お車でお越しの際は、下記「堀越マップ」の第1〜第3駐車場にお停めください。
古谷研の小豆島・堀越でのこれまでの活動はこちら。
皆さん、このページをガイドブック代わりにぜひ堀越に遊びに来てくださいね。
よろしくおねがいします。
2016.10.2 シシ垣お披露目会にて
追記:お披露目会の様子を小豆島町・塩田町長のブログ
『町長の「八日目の蝉」記』にてご紹介いただきました!→その1・その2